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活用事例

朝日地球会議における字幕対応の取り組み

朝日地球会議のイメージ画像
  • インタビュー日

    2025年12月9日

  • 朝日新聞社 コンテンツ&コミュニティ部

    小原 智恵様

  • アルファサード株式会社 取締役 技術開発担当

    野田 純生

  • ウェブサイトURL

    https://www.asahi.com/eco/awf/

以下、敬称略

概要

朝日地球会議は、朝日新聞社が主催する国際フォーラムで、気候変動や国際関係、技術革新、社会課題など地球規模のテーマについて専門家や市民が議論し、持続可能な未来を考える場です。リアルとオンラインで開催されています。今年は約1時間のパネルディスカッションや対談など全25セッションを配信しました。10年目となった今年は、アクセシビリティ向上の一環として、全セッション動画に字幕を付ける方針を決定。朝日新聞社とアルファサードが協力し、全セッション動画への字幕付与を実施しました。

字幕付与の背景と準備

地球会議の全セッション動画に字幕を付与するにあたって、ジマクルをご利用いただきました。そこまでの流れを教えていただけますか。

小原:

最初に「字幕の基本ルール」と「バリアフリー字幕の考え方」などを説明する勉強会を野田さんに開催していただきました。

野田:

朝日新聞社のブランドサイトで公開されているショートドラマ「新しい朝をつくれ。」を題材に、一般的な字幕のルールや、バリアフリー字幕についてお話しました。バリアフリー字幕とは、セリフだけではなく映像内の音から得られる情報も文字にするものです。

誰が話しているのかを示す話者名や、紙をぶちまけた音、タイプライターの音などの効果音も含めます。

1画面に収める文字数や行数など、基本的なルールを説明しました。このときは「ジマクル」の宣伝はほとんどせず、字幕の重要性を理解してもらうことに重点を置きました。

小原:

説明会の後、実際にジマクルを使って自分たちで字幕をつけてみました。その後も、ツールを触ってみて出てきた疑問点を質問する会を開催してもらうなどして、理解を深めていきました。

野田:

ジマクルをリリースした直後だったこともあり「ぜひ使ってみてください」ということで作業を分担しました。アルファサードでも事前収録分の動画に字幕をつけるお手伝いをしました。通常の字幕が6本、バリアフリー字幕が1本です。ジマクルに関わるメンバーで手分けし、最終チェックは私が行いました。

朝日地球会議2025の動画のスクリーンショット
朝日地球会議2025 「音のない世界、音のないスポーツとはーデフリンピックで考える社会」より

ジマクルが無かったら配信できなかったかも?

ジマクルを触ってみて、実際どうでしたか?

小原:

AI による文字起こしは、最近どのツールも性能がよくなっていますが、動画の映像にあわせて字幕を割り付けていく作業は非常に大変です。いくつかのツールを試しましたが、動画を見ながら自分の耳と秒数を頼りに字幕を割り付けるのは本当に手間がかかるし難しい。

ジマクルは操作もわかりやすく、自動で割り付けてくれるので「一気にここまでできるんだ!」と驚きました。

その後は、ひとつずつの字幕が適切に表示されるように調整していく作業が必要ですが、それは慣れます。だんだんコツを掴んでスピードも上がります。

ジマクルの字幕編集画面のスクリーンショット
ジマクルで編集中の画面 字幕の編集や秒数の調整が可能
小原:

字幕をつける取り組みは今年度が初めてだったので、ジマクルが無かったら、配信開始が当初の予定よりも遅れていたかもしれないです。部内で手分けして作業しましたが、ほとんどの人にとって初めてのことだった。実際には事務局メンバー6人が担当し、1本あたり平均2日かけてジマクルで字幕の初稿をつくりました。その後、セッションのコーディネーターと何度かチェックをしていくという流れで行いました。

ITスキルが高くなくても使える操作性は大きな強みです。地球会議は専門的な内容で難しい言葉がたくさん出てくるセッションもありますが、この先、AI の性能ももっとよくなると思うので、さらに作業は容易にできると考えています。

野田:

使っていただいたときは、固有名詞の処理に少し不具合がありましたが、すでに修正済みです。専門用語(固有名詞)を事前に登録すれば、かなり楽になるはずです。

小原:

哲学や量子力学など難解なテーマのセッションもあり、自動で付与される字幕では対応できないこともありました。人間の目でチェックしながら修正できる点も良かったです。

ジマクルのユーザー辞書編集画面のスクリーンショット
ユーザー辞書の編集画面

改善点と今後への期待

もっとここがこうだったら良かったのにと、思った点はありましたか?

小原:

外国語のセッションがあるので、ジマクルの中で翻訳ができるといいなと思いました。今回、英語など外国語で行われたセッションでは、専門家や会社に依頼するなどして翻訳しました。

野田:

もともと字幕には、いわゆるセリフの字幕とバリアフリー字幕、そして翻訳字幕があります。洋画の字幕みたいなものですね。それを考えると、翻訳機能と連動させるというのはあってもいいかもしれません。ただ、1コマに対しての翻訳というのは難しそうですね。文章を時間で切っているので、そのまま翻訳をかけてもうまくいかない。長めに翻訳して割り付けていくのが必要とされるところですね……胸に刻んでおきます。

小原:

海外にコンテンツを発信するという意味でも、翻訳ができるとよさそうです。

英語のコンテンツを日本語字幕だけで発信しているのももったいないので、他の言語にも対応できたらいいなと思います。

実際に作業をしたメンバーにもヒアリングしてみたところ、AIで字幕がうまく生成されないときにはアラートが出るといいなという意見がありました。それと、最低限のルールが書いてあるルールブックのようなものがあると安心できますね。

野田:

来年に向けて理想を言うと、出演者レビューをスケジュールに組み込めるといいですね。何を言っているんだろう?と聞き返すことも少なくないので、本人にもチェックをしてもらったほうが安心です。今回、1本だけですが手話通訳の方にレビューしてもらったものがありました。手話通訳の方がその場で喋ったことと字幕の内容をあえて変えている部分があります。

小原:

できるといいんですが、登壇者全員にチェックしてもらうとなると、確認のやりとりに時間がかかってしまいそうです。

野田:

ジマクルの中に外部プレビューするような機能やコメント欄があるといいのかな。ワークフロー機能ですね。

小原:

何かマークを付けられるといいですね、「ここ見てほしい」みたいな目印。Word のコメント機能やハイライトみたいなイメージでもいいかも。動画と別のExcel を共有して見てもらうんじゃなくて、直接管理画面を見て確認してもらえるとスムーズです。誰かに作業を依頼するなら、あるとありがたい機能です。

字幕は「障害者対応」ではなく「みんなが楽しめる」ために

野田:

音声付きの動画に字幕をつけるというのは JIS X 8341-3 のレベルA、つまり対応必須です。朝日新聞社では地球会議以外にも動画コンテンツやポッドキャストがあり、私はそれらについても字幕をつけることを当たり前にしたいと思っています。そのあたりは、いかがでしょうか?ジマクルは音声ファイルにも対応できます。(注:2025年12月時点で、サービスとしては未対応です)

小原:

他のツールで、過去にチャレンジしたことはあったと聞いていますが、字幕に特化したものがなく、実現していないかと思います。うまくいかなくてやめてしまったり、手間がかかると思って諦めてしまったりしているかもしれません。ジマクルみたいな直感的に使えるツールがあることをまだ知らないんです。

野田:

今のお話をいいように解釈すると、使いやすいツールがあって、やり方さえわかれば諦めないで取り組もうという流れになり得るということですよね。

小原:

そうです、そうなるんじゃないでしょうか。せっかく便利なツールがあるのだから、それを活用してもっと良い方向をみんなで目指していきましょう、みたいな形で。地球会議のような年に1回の大きなイベントが終わったからといって、これで終わらせちゃいけないと思っています。

先日、ユニバーサルイベント検定を受けたのですが「みんなが楽しめるように」という考え方が大事ですよね。障害がある人もない人も、高齢者も若い人も、誰もが楽しめるようにすればいい。今は聞こえる人でも字幕で見ることが増えていますよね。電車の中とか。字幕をつけることで視聴者数が増える可能性もあります。

アクセシビリティ対応というと、特別なことをしなければならないイメージが根強いですが、みんなが使いやすくなって、誰もが楽しめるほうがいい。その感覚がこれからどんどん浸透していけばいいなと思っています。まずは字幕からその意識を広げていきたいです。